永山嘉月の創作ラボ

永山嘉月が小説・イラスト他色々を創作するブログ

小説「陰陽仙華」

「陰陽仙華」まとめて公開しました。

先日完結したプチ連載小説「陰陽仙華」ですが、加筆・修正を終え下記サイトにて公開しました。 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n4703gi/ ノベルアップ+ https://novelup.plus/story/796215271 どっち使おうか悩んで結局両方使ってみることにしま…

「陰陽仙華」おまけ話

細々と書き続けてきたプチ連載小説「陰陽仙華」ですが、なんとか完結しました。 Wordの文字カウント機能で調べた所、全部で16000字程度になりました。 元々そんなに長い話にするつもりはなかったので、こんなもんかなあという感じです。 いやだってガチ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その58

「昔々、あの小屋にはきこりの他に、母親と妻も一緒に住んでいたそうです」 きこりの母親は意地悪な姑で、きこりの妻を毎日つまらない事で叱りつけたという。 裁縫箱から針を取り出しては、事あるごとに刺して虐めていたのだと。 やがてきこりの妻は、耐えき…

プチ連載小説「陰陽仙華」その57

行実は、手にした呪符を針永姫へと投げつけた。真っすぐに放たれた呪符は、針永姫の額に張り付き光を発する。 「嫌じゃ嫌じゃ。まだまだ虐め足りぬ。もっともっと、人間を虐めたいのに・・・」 呪符の光が消えた時、針永姫のいた場所に残っていたのは古びた…

プチ連載小説「陰陽仙華」その56

行実がそう告げると、針永姫は一瞬愕然とした表情を見せた。しかしすぐに気を取り直して、畳んだ舞扇をびしりと突き付けてくる。 「だから何だというのじゃ。長きに渡り蓄えたわらわの力があれば、お前たちなど恐るるに足りぬわ。陰陽師さえ倒してしまえば小…

プチ連載小説「陰陽仙華」その55

「桜鈴、毒はもう大丈夫なんですか。それと、準備とは」 「山の木精たち皆が力を貸してくれたので、毒は抜けました。そして彼らは、あの人と力の源である針たちとの繋がりを断ち切ってくれています」 桜鈴の言葉を聞いて、行実は状況を素早く理解した。繋が…

プチ連載小説「陰陽仙華」その54

やがてその妖気は天井のほうへと集まり、針の雨となって部屋中に降り注いだ。 「いかん!皆を守らねば」 空哉が念を込め、風の膜を傘のように広げて針を防ぐ。範囲が広いため、集中を途切れさせないよう防御に徹する必要があった。 「ほうら、ぼんやりしてる…

プチ連載小説「陰陽仙華」その53

「怒ってばかりいると、顔の小じわが増えちゃうよ。あと、手元も狂う」 怒りに任せ放たれた針を、ひょいとかわして朧がさらに針永姫を煽った。 腰に下げた太刀をすらりと抜き放つと、目にもとまらぬ速さで針永姫の腕を斬り飛ばす。 「この程度の煽りで隙を見…

プチ連載小説「陰陽仙華」その52

「炎月、桜鈴の守護を頼みます。私は・・・もう一人、呼びますか」 行実は懐からまたひとつ式神符を取り出すと、呪を唱えて新たな式神を召喚した。 直垂に身を包んだ少年が、ふわりと式神符から現れる。腰には太刀が下げられていた。 整った顔立ちに少し眠そ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その51

「毒の効果は、先日の戦いで見知っておろう。じわじわと蝕まれる苦痛に悶えながら滅ぶがよい!」 針永姫は扇で口元を隠しながら、ほほほと甲高い声で笑った。己の有利を微塵も疑わぬ、尊大で高慢な態度は隠そうともしていない。 「毒が回りきる前に、おぬし…

プチ連載小説「陰陽仙華」その50

それを合図に、式神たちも動き出す。空哉が羽扇を構えて、念を込めた。 「烏修法・真燕斬!」 風の渦巻きが、一直線に針永姫へと向かって走る。舞扇で事もなげにそれを払った針永姫は、着物の袖から無数の針を飛ばしてきた。 空哉を狙うかと見えた針は、急に…

プチ連載小説「陰陽仙華」その49

「人と共存して生きていくつもりは、ないようですね」 「人間なぞ、わらわが虐めるために生きているようなものじゃ。大人しく喰われて力を寄越せばよい。・・・陰陽師はただの人より美味そうじゃな」 針永姫は元々細い目をさらに細めてにいい、と笑った。あ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その48

行実が頷いたのを見ると、空哉は勢いよくふすまを左右に開いた。 大きな広間の中央に、女が一人立っている。豪奢な着物に身を包んだ、すらりと背の高い女だ。 容貌も整ってはいるが、どこか険のある冷たさを感じる。やや吊り上がった切れ長の目が、行実たち…

プチ連載小説「陰陽仙華」その47

一行はしずしずと、異界へ足を踏み入れる。 先頭に狐火の炎月、二番目は烏天狗の空哉。そして行実が続き、後ろに木精の桜鈴という順番で細長い廊下を歩いている。 見られている気配は常にあったが、行く手を阻むものが現れるということもない。 ただし背後を…

プチ連載小説「陰陽仙華」その46

「お邪魔しますよ」 行実は小屋に近づくと、玄関の戸をすっと横に引き開けた。炎月が中を照らす。 室内は、無人であった。そして、さらに不自然な点があった。内部の広さが、外から見た時より明らかに広いのだ。 土間の向こうに、細長い廊下が続いている。こ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その45

行実と式神の一行が、すっかり暗くなった山道をひたひたと進む。炎月が照らし出す範囲の他は、ただ暗闇がわだかまるばかりである。 それでも、桜鈴の先導により迷う事もなく目的の場所へと近づいていった。 胸のざわつくような嫌な気配が、確実に濃さを増し…

プチ連載小説「陰陽仙華」その44

山中に分け入ると、生い茂った草木のためさらに辺りは暗さを増したようだ。夜の闇は確実にすぐそばまで迫っていた。 「道は一応ありますが、これは少々難儀するかもしれませんね」 行実がそう呟くと、懐の中で微かに式神符が震えた。おや、と思って取り出し…

プチ連載小説「陰陽仙華」その43

やがて牛車は、ごとりと音を立てて止まる。外から狸政の声がした。 「行実様、到着いたしました。山から何やら良からぬ気配がいたします」 行実は御簾を上げて外へ出た。日はかなり傾いてきており、山中を歩くうちに夜になってしまうだろう。 あやかしの主た…

プチ連載小説「陰陽仙華」その42

不知火山のふもとまでは、牛車を使う。山道は険しく車で上がるには向かないので、そこからは徒歩で行く予定だ。 牛車を先導するのは、化け狸の式神である。戦闘能力は低いが、人に化けるのが上手く頭の回転も速いので日常の用や使者として活躍していた。 無…

プチ連載小説「陰陽仙華」その41

いつものように行実は、淡々と仕事道具の準備をする。 いろいろある式神符の中から、桜色の小袖を着た女性の絵姿が描かれたものをそっと取った。 「約束ですからね、行きましょうか。後は・・・」 式神は各々違った強さや特徴を持っている。あやかし達に警戒…

プチ連載小説「陰陽仙華」その40

「力を貸してくれてありがとうございます。共にあやかしを倒しにいきましょう」 社の前に戻った行実は、鏡夢の保護していた男を解放すると屋敷へ戻った。 男はしきりに頭を下げて礼を言っていたが、しばらく夜歩きは控えることだろう。 それからまた何日か経…

プチ連載小説「陰陽仙華」その39

「ですが、あなたは木精。ここから動けないのでは?」 「無論本体は動けませんが、この姿であれば大丈夫。わりと気軽に散歩に出たりもするんですよ」 ふふっと女性が笑みをこぼす。始めて見せる表情であったが、温かで魅力的なその笑顔は行実に好ましい感情…

プチ連載小説「陰陽仙華」その38

見知った気配だ。香りの元を辿れば、そこには昼間あった桜色の小袖の女性がいた。 「あやかしを退治してくれたのですね。ありがとうございます」 「しかしまだ、これで終わりというわけにはいきません。不知火山まで行かなくては」 「不知火山?」 首をかし…

プチ連載小説「陰陽仙華」その37

そうこうする内にも、黒い妖気はあやかしの全身に広がっていく。 全てを真っ黒に覆いつくした時・・・あやかしは灰となって崩れ落ちた。 風が灰を吹き散らし、後にはただ色を失った針が残るのみである。 服についた灰を払いながら、空哉が静かに呟いた。 「…

プチ連載小説「陰陽仙華」その36

あやかしは素直に語りだした。見下すこともせず目線を下げて話しかけてくる行実の様子に、何か感じ入るものがあったのかもしれない。 行実は、さらに言葉を促した。 「針をくれた女性のことについて、何か知っている事があれば話してもらえますか」 「あの女…

プチ連載小説「陰陽仙華」その35

「くそっ、放せ!放さぬか!」 「所詮借り物の力ではその程度よ。我らの絆には及ばなかったな」 もがくあやかしを見下ろしながら、空哉が淡々と勝利宣言を放つ。 行実はあやかしに近づくと、身をかがめて顔を覗き込むようにして問うた。 「改めて聞きたいん…

プチ連載小説「陰陽仙華」その34

「こんなもので我を止められると思うな!我は・・・負けぬ!」 あやかしが、束ねた触手で必死に斬撃をさばく。反撃しようと試みるものの、触手が奇妙な方向へと曲がってしまい空哉には届かない。 「わたくしは、あなたの心を映す鏡・・・焦るほどに、正しき…

プチ連載小説「陰陽仙華」その33

鏡夢は宮中で長らく使われた鏡に、魂の宿った付喪神・・・照魔鏡である。 真実を照らし出すと共に、目くらましで相手を惑乱させることもできるのだ。 鏡夢が衣の袖でふわりと男を包み込めば、たちまち姿が見えなくなった。 「さて、あやかし退治と参りましょ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その32

「くくく、まだまだ触手は増やせるぞ。そうら、そこの人間ともどもいつまで守り切れるかな」 触手のうち1本が、操られ連れてこられていた男へと向かう。守護についている炎月が、正面から触手に噛みつきかろうじて動きを止めた。 渾身の力で触手を噛み砕き…

プチ連載小説「陰陽仙華」その31

あやかしは不敵な笑みを浮かべると、無数の触手を伸ばして行実と空哉に向けた。 それぞれが赤黒い妖気によって、より禍々しく強化されているようだ。 「我を怒らせし事、あの世で後悔するがいい。この力があれば我は無敵よ!」 触手が走る。空哉が風を起こし…