永山嘉月の創作ラボ

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プチ連載小説「陰陽仙華」その51

「毒の効果は、先日の戦いで見知っておろう。じわじわと蝕まれる苦痛に悶えながら滅ぶがよい!」

 

針永姫は扇で口元を隠しながら、ほほほと甲高い声で笑った。己の有利を微塵も疑わぬ、尊大で高慢な態度は隠そうともしていない。

 

「毒が回りきる前に、おぬしを倒せば済むことよ。烏修法・千斬鋼!」

 

空哉が素早く斬撃を繰り出しながら、接近を試みる。針永姫は扇と針で応戦する構えだ。

 

二人がそうしてやりあっている中、行実は桜鈴の手当てをしていた。

 

木の幹に呪符を張り付け、呪を唱える。しばらく念を送っているうちに、少しずつ桜鈴の顔から苦痛の色が消えていった。

 

「呪によって毒の巡りを遅らせました。ですが、完全に毒を除去できるわけではありません。急いであやかしを倒さなくては」

 

「わたしは大丈夫です、行実様。ここは山中、木精はたくさんいます。彼らの力を借り、毒を浄化できるかもしれません」

 

桜鈴は地に膝をつくと、胸の前で手を組み祈りをささげるように目を閉じた。