プチ連載小説「陰陽仙華」その50
それを合図に、式神たちも動き出す。空哉が羽扇を構えて、念を込めた。
「烏修法・真燕斬!」
風の渦巻きが、一直線に針永姫へと向かって走る。舞扇で事もなげにそれを払った針永姫は、着物の袖から無数の針を飛ばしてきた。
空哉を狙うかと見えた針は、急に進路を変えると行実の元へ殺到する。雨のように降り注いだ針はしかし、突如生えてきた木の幹によって遮られた。
「行実様を傷つけるのは、わたしが許しません」
桜の精である桜鈴によって作られた、樹木の盾だ。針永姫は木に突き立つ針を見やると、意地悪そうな笑みを浮かべた。
「木精ごときが、わらわの攻撃を防いだつもりか。この針は、そんなに甘いものではないぞえ」
桜鈴の顔が苦痛に歪む。思わずよろめいた体を、行実が支えた。
「桜鈴、大丈夫ですか。この針は・・・毒が仕込まれていますね」