永山嘉月の創作ラボ

永山嘉月が小説・イラスト他色々を創作するブログ

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

プチ連載小説「陰陽仙華」その28

この程度呼ばわりされたあやかしは、怒りにかちかちと歯を噛み鳴らした。 触手の先端が鋭く尖り、幾筋もの槍へと変化する。 「我の力を侮りしこと、その身で後悔させてやるわ。死ねい!」 触手の槍は複雑な軌道を描きながら、烏天狗の空哉めがけて殺到した。…

プチ連載小説「陰陽仙華」その27

一陣の風とともに現れ出でたその式神は、背中の翼を広げて上空で静止した。 修験者のごとき装束を身にまとい、黒い羽毛に覆われた鳥の頭がついている。 年経た烏が霊力を得て人化したもの・・・烏天狗であった。 「行実様、お怪我はありませんか」 「大丈夫…

プチ連載小説「陰陽仙華」その26

慌てる様子もなく行実は、式神符を取り出して素早く呪を唱える。 伸ばされた触手を炎の帯が薙いでいき、狐火の炎月が姿を現した。 「炎月、戦いに巻き込まれないようあの人を守ってくれ」 「御意」 虚ろな目をしていた男は、正気を取り戻して怯えた目で震え…

プチ連載小説「陰陽仙華」その25

行実が進み出た。突然現れた人間にあやかしは驚いたような表情を見せたが、すぐに金色の目を吊り上げて行実を睨みつける。 「盗み見ておったのか、こざかしい陰陽師めが。我の食事の邪魔をするな」 「人を襲うというのなら、見過ごすわけにはいきません。そ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その24

妖気を放散させていたあやかしが、くくっと小さな笑い声を立てた。 「おお、今宵もさっそく餌がかかったわ。そうら、こっちへおいで・・・」 暗い参道の向こうから、ふらふらと人影が歩いてきた。近づいてくるにしたがって、はっきりと様子が見て取れる。 焦…

プチ連載小説「陰陽仙華」その23

社の前に、禍々しい気配がわだかまっている。黒い靄のようなそれは、徐々に人の姿へと変化していった。 派手な金色の着物に身を包んだあやかしだ。背はあまり高くない。着物と同じ金色をした目が、らんらんと輝いている。 行実がいることに気づく様子もなく…

プチ連載小説「陰陽仙華」その22

日が暮れようとしている。太陽の加護が失われ、世界に闇が満ちていく。 なりを潜めていたあやかしたちが宴の時間とばかりに騒ぎ出す、夜の始まりである。 行実は再度神社跡を訪れ、朽ちた社の陰に身を隠してあやかしを待っていた。 元より目につきにくい場所…

プチ連載小説「陰陽仙華」その21

年経た獣や樹木が霊的な力を得ることは、しばしばある。木の精霊はその性質上、土地に縛られ動くことができない。 邪気に染まった土地から、逃れる方法がないのだ。行実はうなずいた。 「なるほど・・・わかりました。やはり一度そのあやかしと会って話をす…

プチ連載小説「陰陽仙華」その20

「そのあやかしは、夜になるとやってきます。周囲に妖気を発して通りすがる人間を誘い込み、生気を吸うのです」 それについては行実も聞いていた。生気を吸われた者は死ぬまではいかずとも、しばらく寝込むことになるという。 しかし、あやかしがこれから先…

プチ連載小説「陰陽仙華」その19

「あなたもそのあやかしには迷惑しているのですか」 「わたしは、ここでの静かな暮らしを邪魔されたくないのです」 行実は目の前の女性をじっと見つめた。彼女が人間ではないのは、気配で解る。しかし、邪悪なものは感じない。 「あやかしについて、あなたが…

プチ連載小説「陰陽仙華」その18

行実が近づくにつれ、人影の正体がはっきりと見えた。 桜色の小袖を身にまとった、若い女性だ。きめの細かな白い肌に、しっとりと濡れたような黒髪の対比が美しい。 小袖の色ともよく似た桜色の唇から、静かに言葉が発せられた。 「陰陽師の方ですね。いずれ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その17

周囲をそれとなく警戒しつつ、行実は草木の生い茂る神社跡へと足を踏み入れた。 手入れがされていないので雑草は多いが、奥の境内へ向かって石が敷かれているため歩行にはさほど苦労せずに済む。 頭上には年季の入った木々が自由自在に枝葉を伸ばし、緑の天…

新生活で忙しく、創作する余裕なくなってました。

こんにちは、永山嘉月です。 4月から新生活を始めて忙しく動いている人も多いと思いますが、私も環境が大きく変わりました。 慣れないことや苦手なことにも挑戦しなければいけなくなり、ここ数日フルパワー発揮して奮闘中。 正直ちょっと息切れしてきた・・…

プチ連載小説「陰陽仙華」その16

あらかじめ伝え聞いた話を元に、怪異が出るという神社跡を探す。 しかし、発見までには少々の時間を要した。深々と草木に覆われていたので、元が何であったのかよくわからない状態になっていたからだ。 たまたま付近に住んでいた老婆が神社のことを覚えてい…