永山嘉月の創作ラボ

永山嘉月が小説・イラスト他色々を創作するブログ

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

プチ連載小説「陰陽仙華」その41

いつものように行実は、淡々と仕事道具の準備をする。 いろいろある式神符の中から、桜色の小袖を着た女性の絵姿が描かれたものをそっと取った。 「約束ですからね、行きましょうか。後は・・・」 式神は各々違った強さや特徴を持っている。あやかし達に警戒…

プチ連載小説「陰陽仙華」その40

「力を貸してくれてありがとうございます。共にあやかしを倒しにいきましょう」 社の前に戻った行実は、鏡夢の保護していた男を解放すると屋敷へ戻った。 男はしきりに頭を下げて礼を言っていたが、しばらく夜歩きは控えることだろう。 それからまた何日か経…

プチ連載小説「陰陽仙華」その39

「ですが、あなたは木精。ここから動けないのでは?」 「無論本体は動けませんが、この姿であれば大丈夫。わりと気軽に散歩に出たりもするんですよ」 ふふっと女性が笑みをこぼす。始めて見せる表情であったが、温かで魅力的なその笑顔は行実に好ましい感情…

プチ連載小説「陰陽仙華」その38

見知った気配だ。香りの元を辿れば、そこには昼間あった桜色の小袖の女性がいた。 「あやかしを退治してくれたのですね。ありがとうございます」 「しかしまだ、これで終わりというわけにはいきません。不知火山まで行かなくては」 「不知火山?」 首をかし…

プチ連載小説「陰陽仙華」その37

そうこうする内にも、黒い妖気はあやかしの全身に広がっていく。 全てを真っ黒に覆いつくした時・・・あやかしは灰となって崩れ落ちた。 風が灰を吹き散らし、後にはただ色を失った針が残るのみである。 服についた灰を払いながら、空哉が静かに呟いた。 「…

プチ連載小説「陰陽仙華」その36

あやかしは素直に語りだした。見下すこともせず目線を下げて話しかけてくる行実の様子に、何か感じ入るものがあったのかもしれない。 行実は、さらに言葉を促した。 「針をくれた女性のことについて、何か知っている事があれば話してもらえますか」 「あの女…

プチ連載小説「陰陽仙華」その35

「くそっ、放せ!放さぬか!」 「所詮借り物の力ではその程度よ。我らの絆には及ばなかったな」 もがくあやかしを見下ろしながら、空哉が淡々と勝利宣言を放つ。 行実はあやかしに近づくと、身をかがめて顔を覗き込むようにして問うた。 「改めて聞きたいん…

プチ連載小説「陰陽仙華」その34

「こんなもので我を止められると思うな!我は・・・負けぬ!」 あやかしが、束ねた触手で必死に斬撃をさばく。反撃しようと試みるものの、触手が奇妙な方向へと曲がってしまい空哉には届かない。 「わたくしは、あなたの心を映す鏡・・・焦るほどに、正しき…

新型コロナウイルスで自粛中の私の生活

最近あまり雑記を書いてないので、少し書いてみようかと思います。 新型コロナウイルスの影響により、みんなが自粛生活を頑張っている最中ですね。 我が家にも、もちろん影響は色々出ています。 4歳の長女と4か月の二女がいるんですが、こども園が登園回避…

プチ連載小説「陰陽仙華」その33

鏡夢は宮中で長らく使われた鏡に、魂の宿った付喪神・・・照魔鏡である。 真実を照らし出すと共に、目くらましで相手を惑乱させることもできるのだ。 鏡夢が衣の袖でふわりと男を包み込めば、たちまち姿が見えなくなった。 「さて、あやかし退治と参りましょ…

プチ連載小説「陰陽仙華」その32

「くくく、まだまだ触手は増やせるぞ。そうら、そこの人間ともどもいつまで守り切れるかな」 触手のうち1本が、操られ連れてこられていた男へと向かう。守護についている炎月が、正面から触手に噛みつきかろうじて動きを止めた。 渾身の力で触手を噛み砕き…

プチ連載小説「陰陽仙華」その31

あやかしは不敵な笑みを浮かべると、無数の触手を伸ばして行実と空哉に向けた。 それぞれが赤黒い妖気によって、より禍々しく強化されているようだ。 「我を怒らせし事、あの世で後悔するがいい。この力があれば我は無敵よ!」 触手が走る。空哉が風を起こし…

プチ連載小説「陰陽仙華」その30

しかし苦し紛れの攻撃は、空哉の斬撃によってあっさりと防がれる。 「お見通しだ。行実様に手出しはさせぬよ」 「・・・こうなれば、またあの力を使うまで。マガツ針よ、我に力を・・・!」 あやかしは懐から1本の針を取り出すと、それを自らの額に刺した。…

プチ連載小説「陰陽仙華」その29

風の刃が触手の槍を切り刻み、ばらばらに吹き散らした。 「そうら、今度はこちらからいくぞ。烏修法・真燕斬!」 空哉が自身の羽で作った黒い羽扇を取り出し、正面に構える。 喝と一声大きく鳴けば、羽扇の先を中心に風の渦巻きが発生した。 あやかしは回転…