プチ連載小説「陰陽仙華」その35
「くそっ、放せ!放さぬか!」
「所詮借り物の力ではその程度よ。我らの絆には及ばなかったな」
もがくあやかしを見下ろしながら、空哉が淡々と勝利宣言を放つ。
行実はあやかしに近づくと、身をかがめて顔を覗き込むようにして問うた。
「改めて聞きたいんですが、あの針について知っている事を教えてください」
「針・・・マガツ針の事か?あの妖怪女め、力を出し惜しみしおって・・・!もっと力を寄越していれば、お前たちなどに負けなかったものを」
あやかしの顔が、苦々しい怒りに歪んだ。行実が重ねて質問する。
「やはり別のあやかしから貰った物なのですね。その人は何と言って、あなたに針を与えたのですか」
「針を通じて力を貸してやるから、人を喰らって得た力の分け前を寄越せと。自分の力があれば、陰陽師など恐れるに足りぬと・・・」