プチ連載小説「陰陽仙華」その34
「こんなもので我を止められると思うな!我は・・・負けぬ!」
あやかしが、束ねた触手で必死に斬撃をさばく。反撃しようと試みるものの、触手が奇妙な方向へと曲がってしまい空哉には届かない。
「わたくしは、あなたの心を映す鏡・・・焦るほどに、正しき道を見失いますわ」
鏡夢の幻術の影響であった。鏡像により空間が歪んで見えるため、本来狙った場所とはまったく違うところへ攻撃が逸れてしまう。
半面、空哉の斬撃は確実にあやかしの体力を削っていた。息は上がり、表情には焦りの色が見て取れる。
「お前を殺せば、式神も力を失う!死ねい!」
あやかしは行実に向けて触手の一撃を放った。残りの力すべてを込めた、渾身の一撃であった。
行実は慌てた様子もなく、呪符を投げつけ触手をただの妖気へと戻し霧散させる。
そこへ空哉が上からあやかしの背に飛び乗り、地面へと押さえつけた。