プチ連載小説「陰陽仙華」その36
あやかしは素直に語りだした。見下すこともせず目線を下げて話しかけてくる行実の様子に、何か感じ入るものがあったのかもしれない。
行実は、さらに言葉を促した。
「針をくれた女性のことについて、何か知っている事があれば話してもらえますか」
「あの女は・・・実際、強い力を持っていた。貸し出してもまだ余りあるくらいの力をな。不知火山を彷徨っていた時に出会った、針永姫という女だ。山の中腹に・・・」
そこまで語ると、あやかしは突如うめき声を上げ始めた。苦悶に満ちた顔には、脂汗が浮かんでいる。
額に刺さったマガツ針から、黒い妖気が出ていた。妖気はあやかしの体に巡り、皮膚をどす黒い色へと変えていく。
「いけない!針を抜かなくては」
針を掴もうとした行実を制して、空哉が針を引き抜こうと試みた。しかし、空哉の力を持ってしても針はぴくりとも動かない。