プチ連載小説「陰陽仙華」その37
そうこうする内にも、黒い妖気はあやかしの全身に広がっていく。
全てを真っ黒に覆いつくした時・・・あやかしは灰となって崩れ落ちた。
風が灰を吹き散らし、後にはただ色を失った針が残るのみである。
服についた灰を払いながら、空哉が静かに呟いた。
「口封じですな。よほど自分の事は知られたくなかったと見える」
「しかし彼が語ってくれたおかげで、手掛かりはつかめました。後日、不知火山を調べに行きましょう」
行実は、残った針をまた呪符でつまんで拾い上げると懐にしまいこんだ。
その時、ふわりと心地よい桜の花の香りがした。