プチ連載小説「陰陽仙華」その38
見知った気配だ。香りの元を辿れば、そこには昼間あった桜色の小袖の女性がいた。
「あやかしを退治してくれたのですね。ありがとうございます」
「しかしまだ、これで終わりというわけにはいきません。不知火山まで行かなくては」
「不知火山?」
首をかしげる女性に、行実は回収したばかりの針を見せる。
女性は針を見ると、わずかに眉をひそめた。
「何だか嫌な気配がします」
「そうなんですよ。この針を使って悪さをしているあやかしが、不知火山にいるようなので会いにいきます」
しばし何かを考えた後、女性は再び静かに口を開いた。
「でしたら、私も共にお連れください。あやかしの脅威を除いてくださったお礼に、あなたの式神となりましょう」