プチ連載小説「陰陽仙華」その47
一行はしずしずと、異界へ足を踏み入れる。
先頭に狐火の炎月、二番目は烏天狗の空哉。そして行実が続き、後ろに木精の桜鈴という順番で細長い廊下を歩いている。
見られている気配は常にあったが、行く手を阻むものが現れるということもない。
ただし背後を振り向けば、今しがた歩いてきたはずの道はすでになかった。
まっすぐ続いていた廊下は、通った覚えのない四つ辻になっている。まっすぐ戻った所で、元の場所に戻れるとは思えなかった。
どのくらいそうして前に進んだだろうか。やがて、目の前に花鳥風月の意匠がほどこされたふすまが現れた。
「行実様、よろしいですか」
「ええ、お願いします」