永山嘉月の創作ラボ

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プチ連載小説「陰陽仙華」その48

行実が頷いたのを見ると、空哉は勢いよくふすまを左右に開いた。

 

大きな広間の中央に、女が一人立っている。豪奢な着物に身を包んだ、すらりと背の高い女だ。

 

容貌も整ってはいるが、どこか険のある冷たさを感じる。やや吊り上がった切れ長の目が、行実たち一行を見ていた。

 

「あなたが、針永姫さんですか」

 

「いかにも。わらわは針永姫、とこしえの美の化身である。下賤の者どもよ、何用でここへ来たのか」

 

「お分かりのはずですよ。他のあやかし達に針を渡して、人を喰わせていたでしょう」

 

行実がそう問うと、針永姫はふふんと鼻を鳴らして不敵な笑みを浮かべた。

 

「汚れ仕事は馬鹿どもに任せ、労せずして美と力を増すのじゃ。おかげで、こんなにも強くなったわ」

 

針永姫が妖気を放つ。辺りの空間を包み込むような禍々しい気配に、式神たちが身構えた。