プチ連載小説「陰陽仙華」その46
「お邪魔しますよ」
行実は小屋に近づくと、玄関の戸をすっと横に引き開けた。炎月が中を照らす。
室内は、無人であった。そして、さらに不自然な点があった。内部の広さが、外から見た時より明らかに広いのだ。
土間の向こうに、細長い廊下が続いている。こじんまりとした小屋なのに、先が見通せないほどの長さがある。
「あやかしが、異界を形成しているようですね。入ってこい、という事でしょうか」
力の強いあやかしには、異界を作ることのできる者がいる。獲物を閉じ込め逃がさないためでもあり、自身が身を隠すためでもある。
いずれにせよ、異界に入るということは敵の懐に飛び込むということであった。進むも退くも、おそらく簡単にはいかないだろう。
「奥で待っておられるようなので、行きましょう。空哉も来てください」