プチ連載小説「陰陽仙華」その45
行実と式神の一行が、すっかり暗くなった山道をひたひたと進む。炎月が照らし出す範囲の他は、ただ暗闇がわだかまるばかりである。
それでも、桜鈴の先導により迷う事もなく目的の場所へと近づいていった。
胸のざわつくような嫌な気配が、確実に濃さを増してきている。
「この山の木々たちも、良くないあやかしの存在を憂いているようです。行実様、どうか彼らをお救いください」
「そうですね。ほら桜鈴、あそこに見える建物で間違いないようですよ」
行実の指さす先には、木造りの簡素な小屋がひとつ。相応に年季が入ってはいるが、荒れ果てた様子はない。
普通に今も人が住み暮らしているかのように整えられている。放棄された山中の廃屋としては、不自然であった。