プチ連載小説「陰陽仙華」その57
行実は、手にした呪符を針永姫へと投げつけた。真っすぐに放たれた呪符は、針永姫の額に張り付き光を発する。
「嫌じゃ嫌じゃ。まだまだ虐め足りぬ。もっともっと、人間を虐めたいのに・・・」
呪符の光が消えた時、針永姫のいた場所に残っていたのは古びた一本の針だった。呪符によって浄化され、もはや何の力も残っていない。
「これが彼女の本体ですね」
行実が無造作につまむと、針はボロボロと崩れ落ちた。それが他のあやかしを巧みに利用し、人の精気を吸い取り続けた針永姫の最期であった。
「終わりました。皆、力を貸してくれてありがとう。では、帰りましょうか」
針永姫が祓われたことで異界はなくなり、元の古いきこりの小屋へと戻っていた。再び桜鈴の先導で、山道を降りていく。
桜鈴は、山の木精たちに聞いたという昔話を語りながら歩いた。