プチ連載小説「陰陽仙華」その54
やがてその妖気は天井のほうへと集まり、針の雨となって部屋中に降り注いだ。
「いかん!皆を守らねば」
空哉が念を込め、風の膜を傘のように広げて針を防ぐ。範囲が広いため、集中を途切れさせないよう防御に徹する必要があった。
「ほうら、ぼんやりしてると命が危ないぞえ」
針永姫が舞扇をくるりと回せば、巨大かつ鋭利な針が現れた。標的を串刺しにしようと、槍のように突き進んでくる。
「空哉さん、針の槍は僕が引き受けます」
朧が太刀を振るい、槍の軌道を変えて攻撃を防ぐ。主軸の戦力である二人が、守勢に回らざるを得なくなってしまった。
炎月も祈る桜鈴を守りながら時折炎を飛ばす。が、針永姫の舞扇でひらりと吹き消されてしまう。
元々炎月はさほど攻撃力の高い式神ではないので、仕方のないことではあった。
行実は全体の様子を見ながら、必要な場所へ呪符で援護を入れる。なんとかして、針永姫の隙を伺う必要があった。
「行実様、全ての準備ができました」
それまでじっと祈りを捧げていた桜鈴が、すっと立ち上がるとそう言った。