永山嘉月の創作ラボ

永山嘉月が小説・イラスト他色々を創作するブログ

プチ連載小説「陰陽仙華」その42

不知火山のふもとまでは、牛車を使う。山道は険しく車で上がるには向かないので、そこからは徒歩で行く予定だ。

 

牛車を先導するのは、化け狸の式神である。戦闘能力は低いが、人に化けるのが上手く頭の回転も速いので日常の用や使者として活躍していた。

 

無論屋敷には人間の使用人もいるのだが、行実はあやかし退治に出る時に同道させることはしない。

 

仕事の特性上どうしても危険が伴うし、あやかしに操られたりすることもあるからだ。

 

「狸政、ふもとに到着したら私が戻るまで牛車の番をお願いします」

 

行実は御簾の内から、外を歩く狸の式神に向かって声をかけた。